インフラ整備事業 2024.07.12
水処理施設・下水道管路は、都市インフラの重要な一部であり、コンクリート構造物がその基盤を支えています。
しかし、水処理施設(排水ピット、タンク槽、汚水槽、貯留槽)や下水道全般(処理場、管渠、人孔、その他埋設管)などは過酷な環境に晒されており、知らないうちにコンクリートの腐食と劣化が進行しています。
具体的には、排水・汚水に含まれる「硫化水素ガスやその他の腐食性化学物質(酸、アルカリ、塩、油など)」がコンクリートを侵食し、時間とともに強度を低下させています。
処理の過程でもそれらを完全に取り除くことは困難です。
もしそのままコンクリートの腐食を放置してしまうと…
また、構造物の寿命を縮め、修理や交換の頻度を増加させる原因にもなり得ます。
今回のコラムでは、防食対策の必要性をお伝えするとともに、防食ライニング工法の効果と施工方法、施工事例をご紹介いたします!
排水処理施設・下水道管路におけるBCP対策(リスク低減)、延命処置および機能維持の対策をお考えの皆様にご活用いただければ幸いです。
コンクリートの防食対策にはいくつかの種類がありますが、その中でもおすすめなのが「防食ライニング工法」です。耐熱、耐薬品、耐候性、耐溶剤性、耐水性に優れた各種ライニング材を使用することで高い防食性が見込めます。
硫化水素ガスやその他の腐食性化学物質に対して優れた耐食性を持っている樹脂でコーティングすることで過酷な環境からコンクリート躯体を保護することができます。
【耐食性】有機酸、無機酸、塩類、アルカリ、有機溶剤など
※使用するライニング材(A~D種)によって、防食性が異なります。
あらゆる化学物質に対応することから、製造工場やプラント施設などのコンクリート構造物に施工できます。
コンクリート構造物の延命 |
コンクリートの劣化防止で、構造物の寿命を大幅に延ばすことができます。 これにより、長期間にわたり安全かつ効率的に運用できます。 |
処理施設の性能維持 |
処理施設の性能を長期間維持することができ、腐食や劣化による性能低下を防ぎます。 また、修繕や交換の頻度を減らすことができるので、ランニングコストを抑えます。 |
廃棄物削減(対新設) |
既存のコンクリート構造物を再利用でき、新設に伴う廃棄物の発生を抑えることができます。 これにより、環境負荷の軽減に貢献します。 |
工期短縮(対新設) |
新設工事と比べて、ライニング工法は施工期間が短くて済みます。 ※既存の構造物を活用するため、工期の短縮が可能となり、早期に施設を再稼働させることができます。 |
コンクリート腐食により劣化した(または腐食が進行する恐れがある)既設構造物に防食被覆材を塗布することで、コンクリートの表面を被覆防護して、腐食の進行を防止する工法。
農業用水路の摩耗や浸食を受けた躯体表面に高耐久性を有するポリマーセメントモルタルを塗布し、平滑性(粗度係数)、水密性などの機能回復・向上を図る工法。
防食ライニングの工法選定は腐食環境の条件(腐食の程度や施工場所など)により決まります。
まず施工前に必要な「3つのポイント」を抑え、効果的な防食設計を選んでいきましょう!
▼クリックすると開閉して、概要をご確認いただけます▼
腐食環境とは、材料が腐食する原因となる周囲の物理的・化学的条件のことを指します。
主な腐食環境の要素を簡単にご説明します。
|
分類 |
腐食環境 |
Ⅰ類 |
年間平均H²Sガス濃度が50ppm以上で、コンクリート腐食が極度にみられる腐食環境 | |
Ⅱ類 |
年間平均H²Sガス濃度が10ppm以上50ppm未満で、コンクリート腐食が顕著にみられる腐食環境 | |
Ⅲ類 |
年間平均H²Sガス濃度が10ppm未満ではあるが、コンクリート腐食が明らかにみられる腐食環境 | |
Ⅳ類 |
硫酸によるコンクリート腐食はほとんど生じないが、コンクリートに接する液相が酸性状態になりえる腐食環境 |
工法規格 |
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塗布型ライニング工法 |
モルタルライニング工法 |
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設計腐食 環境 |
Ⅰ類 | D種 | – | – | – |
Ⅱ類 | C種 | D種 | C種 | ||
Ⅲ類 | B種 | C種 | B種 | C種 | |
Ⅳ類 | A種 | – | |||
点検・補修・改築の難易性 | 安易 | 困難 | 安易 | 困難 |
安易 |
困難 |
●代替施設があり、更新時に休止できる ●仮施設が建設でき、総合的に経済的 ●日常点検・定期点検が可能 |
●代替施設がないので、長期間休止できない ●代替施設の建設で、総合的に不経済 ●日常点検・定期点検が困難 ●腐食環境の改善が困難 ●狭いため人が入りにくい |
施設名 |
分類 |
設備名 |
ポンプ施設 |
Ⅱ類 | 流入マンホール、ゲート室、沈砂池・スクリーン水路、ポンプ井、着水井、分配槽、吐出井 |
水処理施設 |
Ⅰ類 | 【付帯する施設】 1)初沈流水トラフ 2)初沈スカムピット及びスカム水路 3)終沈スカムピット及びスカム水路 |
Ⅱ類 | 導水きょ、プリエアレーションタンク、最初沈殿池流入水路、最初沈殿池、返送汚泥水路、最初沈殿池流出水路、反応タンク流入水路 | |
Ⅲ類 | 汚水調整池、雨水滞水池、雨水沈殿池 | |
汚泥処理施設 |
Ⅰ類 | 汚泥洗浄タンク、汚泥貯留槽、脱離液、分離液ピット、受泥槽、 辺流水槽、辺流水管マンホール |
Ⅱ類 | 汚泥濃縮槽、汚泥消化槽(気相部)、コンポスト発酵槽 | |
Ⅲ類 | 脱水汚泥ピット | |
Ⅳ類 | 汚泥消化槽(液相部) |
コンクリートの劣化・腐食状態を確認するための「現状診断」を行います。
※画像はフェノールフタレインによる中性化試験
清掃目視点検/コンクリート劣化診断/鉄製タンク劣化診断/ライニング被膜検査
※圧縮強度・鉄筋探査・接着強度・中性化・厚み測定・仮設膜処理もあります。
コンクリート表面を様々な樹脂でコーティング処理します。
1.準備工・仮施工(初期清掃など) 2.劣化部分の除去 3.断面修復工 4.プライマー塗布
5.防食被覆層の施工・端部処理・養生
事例1.エアレーション槽内のライニング(クリスタルライニング) |
●経過年数約20年 ●コンクリート壁面が腐食し、骨材が露出しているため対策実施 |
事例2.人孔内のライニング |
●経過年数10年 ●硫化水素による腐食及び汚水落下による衝撃緩衝のため対策実施 |
事例3.水処理汚泥貯留槽防食ライニング(ポリウレア樹脂ライニング) |
●経年劣化による老朽化で鉄筋が露出、クラック(ひび割れ)も多いため対策実施 |
事例4.水処理施設曝気槽ライニング(ビニルエステル樹脂ライニング) |
●コンクリート壁面からライニング材が剥離してきたため対策実施 |
環境・条件に合わせたライニング材を修正する使うことで、幅広い用途に対応可能であり、多くの産業や施設で広く修正する採用されています。
施工規模や長期施工によっては費用・工数がかかる場合があるため、計画的な実施をおすすめします。
水処理施設・下水道管路における防食対策は、その施設の特性や環境条件に応じて最適な方法を選択することが重要です。
なお、コンクリート構造物が健康である時に防食対策を施さないと、延長寿命化や処理施設の性能維持が困難になります。
定期的な「現状診断」や施設の延命を図る「防食ライニング」を実施しながら、コンクリート構造物の基盤を維持し、設備の安全性と長期的な安定運用を確保していきましょう!
お客様の事業形態によって提案できるプランはさまざま。
現状をしっかりと見極め、最適なプランをご提案できるようにしっかりとヒアリングを実施したうえで、計画から運用まで一生涯のサポートをさせていただきます。
まずは気軽問い合わせください。
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