インフラ整備事業 2023.08.29
皆さんは、「水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)」が2023年2月1日に一部改正されたのをご存知でしょうか?
※「水質汚濁防止法」は1970年に公害病対策として工場などから排出される汚水や廃液が公共用水域(河川・湖沼・沿岸など)や地下水へ浸透し、健康と生活環境への被害を及ぼさないようにする目的に制定されています。
私たちの生活に欠かせない製品を生産している製造業や化学工場は、様々な薬品・化学物質(有害物質)を取り扱うため、公共用水域や地下水に影響が出ないように当法律の規定に準じた排水基準での排出、施設・設備や作業における漏えい防止、地下水汚染を未然に防止する対策を企業義務として取り組む必要があります。
本コラムでは、有害物質を取り扱う製造業や化学工場の皆様に抑えておいて欲しい「水質汚濁防止法のポイント」と「漏水リスク」に焦点を当て、その影響と漏水対策についてお伝えしたいと思います。
前回の指定物質の見直しから一定期間が経ち、新たにアニリン等4物質が追加されています。
【対象となる有害物質と指定物質】
上記追加物質を含む、人の健康に被害を生ずるおそれがある物質は28種類、人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがある指定物質は56種類が規定対象です。
自社で扱っている物質が何か今一度ご確認ください。
※詳しくは環境省のホームページにてご確認いただけます。
法改定の背景は「工場・事業場の有害物質における地下水汚染事例」が多いため、規制の更なる強化を余儀なくされました。
地下水汚染事例の実態 工場・事業場が原因とされる有害物質における地下水汚染事例は全国7,057 件(平成 24 年度末時点) |
地下水汚染事例と特定事業場の数だけでも相当な数の事業者様が漏えいリスクを背負っているといえます。
当法律には、そういったリスクを回避するために事業者様の点検実施義務が定められています。
特定施設の事業者は、地下水汚染未然防止のために排出水の汚染状態の測定等が規定されおり
排出水の自主測定及び構造基準の遵守状況を定期点検をする義務があります。
※出典:環境省「地下水汚染の未然防止のための構造と点検・ 管理に関するマニュアル」P10
上記の点検漏れがないかを今一度、ご確認ください。
もし、排水基準に適合しない排水を放流してしまうなど、違反した場合は処罰されることがあります。
■過失で排水基準違反をした場合は 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(第31条)
※過失で排水基準違反をした場合は 3 月以下の禁錮又は30 万円以下の罰金
事例1.配管の接続に緩み「河川への油水漏えい」 |
引火性の液体をタンクから別タンクに移し替える作業の途中に油水の漏えいが発生。 ほぼ敷地内で回収するが、一部排水溝から工場近くの河川に油水が流出。 【原因】 配管の接続に緩みと設備の老朽化 |
事例2.廃棄物のずさんな管理「海への高アルカリ水漏えい」 |
工場岸壁が白濁しているのを発見。水質汚濁防止法の基準値を上回る高アルカリ水や猛毒のシアンを含む工場排水が流出。 【原因】 工場内の高炉などから出る製鉄くずの野積みされており、高アルカリ水の成分を含んだ汚水が雨水に混じって海に流れ出した。※こことは別にシアンも漏えい。 |
事例3.廃液の不十分な処理「水道水から高濃度のホルムアルデヒド検出」 |
いくつかの浄水場から供給される水道水中に水道水質基準を超過するホルムアルデヒド濃度が検出。 順次、取水停止等の措置をとった。 【原因】 高濃度のヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の処理を依頼された委託業者が、廃液の中和処理を行ったが、不十分な処理水を排水路から河川に放流。その河川中の処理水が浄水場において、浄水過程で注入される塩素と反応し、ホルムアルデヒドに変化。結果、水道水に影響した。 |
事例4.工場排水の未処理「海から基準値を超える大腸菌が検出」 |
食品加工業の工場の隣接する海から基準値を超える大腸菌が検出。 【原因】 加工時に出た排水を処理せずそのまま海に放流。 |
もし違反や事故となれば※コックの緩みやパッキンの損傷でも漏水は発生します。
企業イメージが損なわれ、信用問題になってしまいますので、しっかりと法律を守っていきましょう!
長々と法律のお話をしましたが、実はここが一番知っておいてほしいところ。
上記、規定を守っていれば…自社点検を実施していれば…「大丈夫」と思っていませんか?
目に見えるところより「見えないところ」にこそ、漏水リスクが潜んでいます。
実際に下水道管や埋設管の管内は、老朽化や不良などあらゆるトラブルが発生しやすい場所。
「水圧不足(消火)」「使用量増加(用水)」「土壌汚染(排水)」と更なるトラブルに発展します。管内だけでなく、設備や部品の破損がトラブルの原因なることもありますので、専門性のある業者に頼む必要があります。
埋設管・下水管の漏水リスクは重大な問題ですが、 適切な対策を実施することで漏水リスクを低減できます。
では具体定な解決策をご紹介します。
1.埋設管の調査・診断(カメラ調査・工場埋設管劣化調査)
漏水リスクを早期に発見し、 修理や補修を行うために重要。
衝撃弾性波検査法、画像展開カメラでは見えない問題を早期発見できます。
調査についてのコラム>
2.埋設管の非開削更生・修繕•更新工事
管内の修理には、 劣化状況や範囲を調査したうえで、 適切な施工を選ぶ必要があります。
オメガライナーエ法、SPR工法、PPSライニング工法など非開削での更生工事を行います。
また、 更生工事が困難な場合は更新工事をご提案することが可能です。 耐久性向上や漏水リスクの低減につながります。
更生・補修工事についてのコラム>
3.緊急対応計画の策定(BCP対簾)
漏水や緊急事態が発生した場合に備えて、 緊急対応計画を策定することが重要。
事前に対応策や担当者の役割を明確化にし、迅速
な対応と被害の最小化を図るためのアドバイスを
ご提示いたします。
4.環境法令の遵守
製造業や化学工場は、 環境規制に厳密に準拠することが求められます。
廃水処理や排水基準、化学物質の管理など、関連する法令や基準をお伝えし、漏水や水質汚濁のリスク低減につなげます。
埋設管や下水道管の不良やトラブルはとても見つけにくいもの。
ただし、配管や設備等の老朽化からくる漏水リスクは定期的な調査・点検、 補修工事を行えば防ぐことが可能です。 まずは管内調査を行い、不良箇所の旱期発見や経年数に合わせた計画的な修繕を実施しましょう!
製造業や化学工場は、 漏水リスクを十分に理解し、継続的な対策に真剣に取り組む必要があります。継続的な保守点検、適切な施工、緊急対応計圃の策定、環境規制の遵守、安定的な水質管理などやることは多いですが、漏水による汚染水漏えい被害やリスクを最小限に抑えることが、安定した生産活動を守り、企業価値を高め、お客様への信頼の実現に繋がります。
お客様の事業形態によって提案できるプランはさまざま。
現状をしっかりと見極め、最適なプランをご提案できるようにしっかりとヒアリングを実施したうえで、計画から運用まで一生涯のサポートをさせていただきます。
まずは気軽問い合わせください。
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